白い枯枝
寒い朝の楽しみの一つは霧氷に飾られた草や木の枯枝です。昇ったばかりの低い陽に、小さな氷の結晶がチ
カチカ光る様子を写真で表現するには、画面をもっと暗くしなくてはなりません。肉眼だと背景を含め全体が明る
くまぶしいのに、枝のここそこのチカチカはさらに明るく、遠くからでもわかります。
肉眼で見えるのは脳が合成した絵なのでしょうね。網膜の画素数はこのカメラの10分の1もありません。視覚
野の下層が相対的に少ない網膜情報を要素に分解し、上層が記憶や経験を基に補充や修飾をして、鮮明な画
像に組み立てるみたい。だとすれば、例えばそれまで一度も雪や氷を見たことのない人が、初めて枯枝の霧氷
を見たとき、わたしとはちがうイメージで了解するのでしょう。
上の写真程度の画面コントラストだと、細かい氷の結晶が集まった透明感のある白さが強調されます。背景
のブラックを強めるにしたがってチカチカが現れ、全体を肉眼に合わせて明るくすれば、白い枝がハレーション
を起こして絵が壊れます。
肉眼もいろんな写真表現も、どれが現実でどれが虚構とは言えないのでしょう。でも好きな絵と嫌いな絵はあり
ます。今日は投票日です。各候補者の脳裏にある世界像はそれぞれちがっているはず。それを一枚の絵として
スクリーンに投影してくれたら、誰に投票すべきか、誰に投票してはならないか、すぐきめられるのに。