屋根さまざま 温暖化を生きる


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  20年とか30年とか前に建てられた家は、一階部分の下屋根と二階を覆う上屋根の二層になっていて、傾斜が

緩やかです。 7年前に北海道に移ることを検討しているとき、美幌役場の人に、雪下ろしがたいへんではないか

と尋ねると、必要ないという返事でした。雪かきは?には、一冬に1,2回だ、と。この答えは、そのころまでその人

が経験していた事実だったのだと思います。きっと、冬はいつも-10度、-20度と冷え込んで風が強く、軽い雪

が吹き飛ばされて溜まらないので、二層で傾斜の緩い屋根でも雪下ろしはせずにすんだのでしょう。

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 新しい家の屋根は一層で、雪が溜まらずに滑り落ちやすい構造です。雪下ろしの必要がない構造に作られて

います。重く湿った雪が積もる回数が増えたからでしょう。ここには、はっきりとは意識されていないかもしれま

せんが、近年の気候温暖化に対する、人々の行動変化が現れています。

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 これは下屋根から落下する氷雪を逃がすために建てられた防壁です。近年ガレージの波板を何度か破壊され

たことで、工夫されたものです。初めからその危険があれば、ガレージの位置が違っていたでしょう。


 産業革命が始まってからの150年で、地球の平均気温は1度上昇したそうです。その影響は極圏に強く現れ、

北極圏の温暖化は平均の2倍、2度が観測されています。北欧、ロシア、アラスカ、北部カナダなどで、融けた氷

床の下から地下資源を掘削したり、北極海航路を開いたりする、新しい経済活動が活発になっているとか。そし

て極北の先住狩漁民の行動も変化してきているようです。北の地では、温暖化は将来のことではなく、すでに人

々の行動変化として現実になっています。

 BBC地球伝説シリーズのある番組で聞いた、気象専門家の発言がわたしの脳裏を離れません。2015年まで

に温暖化ガス濃度が下降に転じなければ手遅れになる、と言うのです。かってスティーブン・ホーキングが、人為

的温暖化で地球が金星化すると、発言したと報じられました。金星は大気の二酸化炭素濃度が地球の30万倍

で、どんな生物も住めない灼熱の星です。

 温暖化の暴走による金星化の可能性は、いまではほとんどの環境専門家が否定しています。しかし「手遅れ」

という言葉の意味は、平均上昇気温3度の、文明が耐えられると思われる限度を突破し、気温の加速度的上昇

が避けられなくなるということです。氷雪の失われた極地の太陽光吸収量急増、永久凍土融解による固体メタン

の気化、地球の肺と言われるアマゾン熱帯雨林の乾燥化による消失などで、温暖化の悪循環にスイッチが入る

のでしょう。現在より気温が10度~15度、海水面が150m~200m高かったとされる白亜紀のような状態になれ

ば、反転が始まるのかもしれません。でも、そのときまでに文明が崩壊していることはまず確実です。

 国際情勢からも国内の選挙公約からも、2015年までに温暖化ガスの濃度低下が始まる可能性はなさそうで

す。地球文明崩壊の運命は定まったのかもしれません。しかしそのときまで、危機を声高に叫ばない人々は、変

化に対応したり新しい条件を利用したりしながら、くらしを営み続けるのでしょう。個人が生きている間は生き、死

ぬときは死ぬのと同じです。

 美幌町のさまざまな屋根を見ながら、そんなことを考えました。