柳虎の尾


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   葉が柳に似て、花が虎の尾に似ていることから、つけられた名前だそうです。 寒

帯などの湿地に咲く花だとか。わたしが見たのは釧路湿原と濤沸湖畔。写真は濤

沸湖水鳥・湿地センター裏の草叢です。黄色い花をつける野草は多いけれど、葉

柄の脇に咲く黄花は、他に思い当たりません。

  
  海岸・湖畔でも山でも、 花と緑が一番美しい季節です。わずか一か月ほどで、八

月後半から九月前半の見どころの少ない季節をはさんで、すぐに紅葉の秋が始ま

ります。半年近い冬に比べ、草木の華やぐ季節のなんて短いこと !  それを思うと、

せっせと出かけて、撮りたくなります。

   6月の最終日曜日にも、ご近所のHoさんの運転で、旭岳山麓・天人峡・白金・美

瑛を回ってきました。走行距離は6百キロほど。海岸草原、山の湖畔と森、それに

今度の道央部。写真がたまる一方です。少しずつ季節遅れのアップになって。

   今日のヤナギトラノオは6月21日のものです。


                                小説 縄文の残光 88
 

                    登米・栗原の戦い(続き)

 
   梅雨の盛りである。壕は水を湛え、二つの川は増水している。その外から矢を

射ても、中には届かない。そこで採用された作戦は、三万の兵で外から包囲し、

一兵も脱出させない。同時に、川のない西側と南門に通じる通路の、二箇所を攻

め口として、二万ずつの兵を突入させることだった。

   西の壕に渡す長い橋が作られた。後方で背の高い木を伐って組み立て、外の

土塁下に立て、前方に倒して内側の土塁下に渡した。兵が橋の途中まで進むと、

内側土塁から矢が降ってきた。橋の幅は狭く、隊伍が組めない。前と左右と頭上

を、盾隊で防ぐことは無理だ。

   矢を受けて倒れる者、水中に墜落する者。橋上の味方を援護しようにも、矢は

内側土塁上の敵に届かない。泳ぎ着いた兵を救助することしかできなかった。橋

に火矢が突き刺さり、炎が上がる。鉦が打たれた。後退である。もう一度、今度は

十本の橋を並べて架け、幅を広くしようと、包囲隊を残して兵たちが森に入る。し

ばし戦いが止んだ。

 
   南門へは、一迫川に架かる橋から、三間(5.4メートル)幅の直線通路が通じ、

壕も土塁も切れている。入城を阻むのは、八脚柱の頑丈な門である。上部は楼屋

で、下に頑丈な扉がある。太い丸太を載せた台車が用意された。扉に衝き当てて

破る攻城兵器だ。両側と後に台車を押す兵が取り付き、楯隊が前を進み、台車の

後に弓隊が続く。

   門に近づくと、矢の雨が降り注いだ。楼屋の上、左右の土塁上に、弓を構えた

エミシがぎっしり並んでいる。台車前面の兵が構えた楯には火矢。ヤマト弓隊が

下から射る矢は、敵に届かない。エミシはそれを見越し、楯も持たず、敵に身を

晒して速射する。狩りで熊を射るとき、二の矢が遅ければ命を落としかねない。速

射は日々のくらしで鍛えられている。

   突然、大きな羽音がして、太い矢が飛来する。楼上と土塁上のエミシ数十人

が、射抜かれて倒れた。身を乗り出していた者は、そのまま落下する。慌てて、他

の射手が柱や土塁に身を隠す。

    「どうした。何があった」

   門内で騎馬隊を揃え、突撃の機会を窺っていたアテルイが叫ぶ。

    「弩()だ!」

   答えたのは、栗原のヌプリ。楼上で弓隊を指揮していた。アザマロの事件の前

に、城内で見たことがあった。水平の台座に弦を張り、引き金で太い矢を射る武

器である。  (この章続く)