濤沸湖畔の仔馬


   そらさん、先日はケーブルに乗らずに、旭岳温泉・勇駒別温泉の周辺を少し歩き

した。緑と花とせせらぎのコースがいくつかあります。

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  濤沸湖畔の一画に、 ヒオウギアヤメの草叢を再生させようと、アヤメ以外の草

を食べる馬が放たれています。確かにそのあたりにはブルーの花が見えます。

花もさることながら、湖畔草原の仔馬も絵になります。ヒトも他の動物も、幼い者

はかわいいですね。


                                  小説 縄文の残光 89
 
                     登米・栗原の戦い(続き)
 
    「門を開け。突撃だ!」アテルイが叫ぶ。

弩を見たことはなかったが、知識はあった。飛距離の長い強力な弓のような武器

で、矢を番えるのに時間がかかるという。台車隊は、楼からの矢が止んだのを見

て、再び前進しようとしていた。門から溢れ出た騎馬隊が襲いかかる。慌てて台

車を後に戻し、歩兵隊が前に出る。門外は三間幅の通路。縦長になれば、先端

で衝突するのは同数。たちまちヤマト側は押し込まれる。だが接近すれば、ヤマ

ト弓隊の矢も届く。騎馬隊が土塁線外の敵部隊に飛び込んで乱戦になる前に、

後方の数十騎が矢を受けて倒れた。

   橋の前に展開した千人ほどの敵を蹴散らした先に、アテルイは見た。橋向こう

に、敵騎兵隊が重厚な陣を構えている。その後には二万に近い歩兵隊。

    「引き上げるぞ」

エミシ騎馬隊の引き足は早い。さんざんに攪乱されていた敵は、追撃も弓を射か

けることもできない。アテルイは無事に城内に戻ったが、弩も台車も破壊できなか

った。二刻(1時間)の戦いで、倒れた射手と騎馬戦士は八十を超す。

   田村麻呂は橋向こうの本陣で、冷静に計算していた。これを十二、三回繰り返

せば、敵騎馬隊を無力化できる。弩が役立つことは分った。三段に構え、交互に

発射させよう。弩の数は全部で四十丁と少ないが、番える間の中断がなくなる。

楼上の射手を連続して倒せるので、台車が門前に到達できる。今日はもう日が暮

れかけている。明日から二日で片付けられる、と。アテルイも、同じ戦いを繰り返

せば、味方の戦士が減るだけだとわかっていた。

   夜の間、楼屋と土塁の各所で篝火(かがりび)が焚かれていた。包囲軍も夜襲

を警戒し、陣の周囲にたくさんの篝火を置き、多数の見張りを立てた。

   夜明けとともに、城攻めの準備が始まった。台車を囲む兵が配置につき、エミ

シの矢が届かないところで、弩兵が三段に構える。

   台車が進む。だが楼上にも土塁上にも射手は現れない。騎馬隊の突出に備え

た弓隊が、矢の届く所まで来ても、城内は静まりかえっている。抵抗のないまま、

台車は門前に達した。勢いをつけ、台車の先端から突き出た丸太を、扉にぶっけ

ること六回。めりめりと木の裂ける音がして、内側の太い閂(かんぬき)が折れる。

雪崩れ込んだヤマト軍を迎えた門内に、敵の姿はなかった。  (この章続く)