小清水高原の雲海


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   雲海写真が狙いで、 一昨日、屈斜路湖を見下ろす三つの高台、小清水高原、

摩周湖第三展望台、津別峠を回ってきました。最初は小清水ハイランド。標高は

725メートル。湖の北東側です。予想通り、下界は晴れていたのに、眼下のオホ

ーツクの森から湖まで、雲に覆われていました。


                                  小説 縄文の残光 84
 

                     登米・栗原の戦い(続き)

 
   河原のヤマト軍は急襲された。防備の陣形を敷く間もない。気づいたときには、

エミシ騎馬隊が弓隊前段に突っ込んでいる。散開し、騎射しながら縦横に駆け回

る。敵味方入り混じり、味方を傷つけるのを恐れ、後段からは矢を放てない。

   鉦が鳴り、前段が後退する。エミシ騎兵隊とヤマト歩兵隊の間が開く。騎兵が

中合わせになり、二騎一組で川沿いに並ぶ。片方が岸近くに停泊する軍船に

火矢を射込む。他方は遠巻きに展開するヤマト軍を威嚇する。エミシの弓は射

程距離が長い。ヤマトの歩兵はその内に踏み込めない。

   火矢を逃れ、岸から離れた軍船に、小船が襲いかかる。無事に戦域を脱出で

きたのは、荷下ろしが終わって、川を下り始めていた数艘だけだった。ヤマトの

軍船団はほぼ壊滅。舟運による補給は、しばらく不可能になった。

 
   野足率いる騎馬軍団が、ようやく態勢を整えた。煙が立ち昇る本営予定地に向

う。数は五百騎、エミシの騎兵と同数だ。野足隊が、突入するエミシ軍に直ちに対

応すれば、戦況はちがったかもしれない。だがまったくの不意打ちだった。

   鞍をはずし、三々五々馬を休ませていた。騎乗して隊列を整えるまでに時間が

かかる。出動できるようになった時には、味方歩兵の楯隊が前面に出て、河原は

膠着状態になっていた。そこで遅まきながら、高台の敵に向かったのである。

   アテルイは、丘の端に立ち、河原の戦況を見守っている。ヤマト軍の後方が左

右に移動を始めた。岸辺の騎兵隊を包囲するつもりのようだ。エミシの馬は速

い。囲まれる前に脱出することは容易だ。野山で狩に明けくれるエミシは目がい

い。丘の合図を見逃さなかった。騎馬戦士たちは脱出しようとはせず、展開する

敵の動きに呼応するように、川沿いに広がった。対する歩兵も急いで両翼に進

み、陣が薄くなる。中央に残る五百人ほどの塊が現れる。浜成とその護衛部隊

である。アテルイはこの時を待っていた。

   駆け下る勢いを利用し、坂の途中でヤマト騎馬隊を乱戦に引き込み、野足を

討つ。そのまま歩兵隊中央の塊に突っ込み、川際の四百と共に浜成に懸かる。

そろそろモレ率いる歩兵隊も到着するだろう。二人の副将軍・野足と浜成を倒せ

ば、敵は大混乱に陥る。そこで、徐々に到着する東の全軍に壊滅的な損害を与

え、伊冶城を包囲する敵勢力を半減させるつもりだった。


   アテルイが、高台のエミシ軍団に突撃を合図しようとしたその時、傍らにつき従

ていたオマロが何か叫び、後を指さした。振り向くと、東から大きな土煙が近づ

いて来る。護送兵が縄を解き、分隊に報せたにちがいない。エミシ騎兵隊接近を

知り、登米集落掃討を中止し、全分隊が本営に駆けつけたようだ。  (この章続く)