波の隊列行進
能取岬の北側、すこし崖に囲まれるようになった海域で、波が規則的な間隔で盛り上がり、波頭をそろえて進
んでいます。数世紀前のヨーロッパで行われた戦争を描いた映画のシーンが頭に浮かびました。いくつかの分
隊が太鼓の音にあわせて行進する、あれです。
これからの温暖期・数十万年の見取り図
7 コメント〈承前〉
③ 著者は温暖化でヒトが滅びることはないと言っています。地球の物理的環境変化の総体とし
てはそうなのだろうと、わたしも納得しました。まずは一安心です。しかし文明崩壊の危惧は残り
何億人、何十億人もの人が、生活基盤を脅かされることになりそうです。
災害の頻度や被災者数がしだいに増えるゆっくりした変化です。堤防、潅がい施設、移住、新
産業の創出など、早くから対応策を講じれば被害を軽減できるでしょう。しかし、逃れようとして
も国境に妨げられたり、対策を講じる資金がなかったりして、わかっていても災害の犠牲になる
人の数は、けして少なくないと思います。
震、再度の原発事故が相次げば、国家破綻状態にならないとも限りません。その場合、被災者
は公的支援など期待できないでしょう。日本以外の経済力のある国でも、貧富の格差が拡大し
ています。なすすべもなく災害に翻弄される貧者は、絶望をつのらせることになります。深い絶
望は人々を狂気に駆り立てます。深刻な騒乱や核戦争に至り、国からも国際社会からも秩序が
失われたら? 不足する食料や生活物資を争って殺しあう人々。飢えや寒さで倒れたまま放置さ
ま蔓延する疫病。
貧しい国や人が異常気象でも絶望的にならない社会。それは、経済成長最優先で、人も会社
も国もひたすら競争に駆り立てられる社会ではないと思います。幸せを分かちあい、不運な人に
手が差し伸べられる社会に向かう変化こそが、温暖化が進む未来への備えです。
それともうひとつ。気象は複雑系です。近年コンピュータが高性能化し、モデルが進歩したの
で、温暖期の地球の大雑把な見取り図は描くことはできるようになりました。しかし依然として、
どの地域をいつどんな異常気象が襲うかは、間近までほとんど予測できません。防災・避難計
画をたて、それを臨機応変に変更し、人々の創意工夫を総動員する、柔軟で強靭な社会システ
ムの構築が必要です。
将来の異常にうまく対応できるかどうか、文明崩壊を回避できるかどうかは、今の日常をどう
変えていくかにかかっているのだと思います。(終わり)