薄氷の湖を泳ぐ


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 湖の解氷した水域でも、まだ夜の間に薄氷が張ることはあります。そんな日の朝の水鳥です。白鳥は氷の多

いところで、首を伸ばしたり縮めたりして、胸で氷を押しのけていました。人が座ったままいざって進むみ

たいな、変な泳ぎ方です。ホオジロガモは氷の少ないところで、潜水したり浮かんだりしながら、ゆったり

餌をとっていました。

これからの温暖期・数十万年の見取り図 
 
  5 北極域の敗者と勝者

 温暖化して北極域の氷が後退すると、南からさまざまな生物が侵入して来る。さらに海洋酸

性化と侵入者が持ち込む病原菌も加わって、ホッキョクダラ、シロイルカ、イッカクなどが消滅の

危機に瀕する。より温暖な地域の木々が、その森に棲む動物とともに北進し、ツンドラに取って

代わる。ホッキョクグマはグリスリーやブラウンベアと混血する可能性がある。極限のシナリオ

だと、固有種として生残るのはむずかしいかもしれない。

 無脊椎動物の敗者候補は、殻のある翼足類、有孔虫、軟体動物、フジツボ、ウニ、カニ、冷

性サンゴである。これらは逃れる場所がないので、ここで負ければそのまま種が絶滅する。

勝者になりえるのは、殻のない翼足類、クラゲ、イソギンチャク、ナマコ、環虫類など。それら

は、すでにより南で生態的地位を確立していた生物なので、北極域で繁栄しても生物多様性

にはまったく貢献しない。

 現在すでに北極に近い地方では、凍土の温度上昇と海岸地帯の氷の消滅が原因で、道路

がゆがみ、海岸が崩壊し、地にあいた穴が家々を侵食しはじめている。これからしだいに海面

が上昇するので、災害に弱い沿岸の居住地は、長い間慢性的な不安定状態に置かれる可能

性がある。だがその後けっきょく、乾燥した安定状態に落ち着くだろう。

 氷のない北極海に、融けた凍土から流れ出した栄養分が流れ込んで沖まで広がる。プランク

トンが大発生するので、豊かな漁場が期待できる。冬でも薄氷が張る程度になれば、北極海

航路が、ロッテルダムからシアトルへは3200キロ、横浜へは7520キロ、現ルートを短縮でき

る。カナダ、アラスカ、ロシア、グリーンランドなどの、今まで海氷や凍土に覆われていた近海底

や地下を発掘できるようになれば、膨大な地下資源が得られると予想され、その一部はもう開

発が始まっている。

 すでにカナダのエカチとディアヴィク鉱山の宝石級天然ダイアモンドの産出量は、世界全体の

10パーセントを超えている。世界の未開発石油埋蔵量の10分の1から3分の1は北極の、特に

浅くて広い大陸棚にあると考えられている。現在でもロシアの石油と天然ガス4分の3近く

は、北極圏の領土から産出されている。アラスカには、北米最大の油田があり、莫大な量のガ

スと石炭も埋蔵されている。カナダも北方の島々などに、化石燃料の大きな埋蔵量がある。

 以前は遠い辺境であったところが、交通の中枢や寄港地・漁業基地になり、海産物加工所・

造船所・精錬所・貯蔵施設などが林立し、しだいに多くの人が移り住む場所になる。(明日に続

)