弥生三月光る海
残氷の海に光が射し、水面が光っています。晴れた早朝ならどの季節でもまぶしい海だけれど、海氷の支配
が終わったすぐ後だと、はなやぐ春の予兆のように感じられます。他は能取岬で、最後の一枚は帽子岩が見え
る網走の海岸で撮りました。
これからの温暖期・数十万年の見取り図 2
1 アンソロポシーン(人類生)―承前
熱帯でも湿潤化が進む地域の人々は、上昇する気温に適応できる。温帯の経済力があ
る人々は、堤防を築いたり移住したりして、海進・高潮・洪水に対応する。グリーンランドの
人々や北極域を国土にもつ国々は、氷床の後退で産業が発達し、その上北極海航路が開
けるので、繁栄を謳歌する。
だが勝者がいれば敗者もいる。熱帯や温帯で、乾燥化が進む地域、海進・洪水で水没す
る地域にくらす貧しい人々は、襲い来る惨禍を逃れられない。極地に適応していて後退す
る氷床を追って逃れようとする生物、酸性化した海で融ける殻をもつ貝やプランクトンなどは
絶滅する。絶滅した種は永遠に失われ、そこから伸びるはずの進化の枝は途絶える。
2 氷河期
すでに始まっている温暖化を押しとどめることはできない。だが、化石燃料消費をやめる
ことで、変動のピークを低くすることはできる。そして、高温期からの回復を50万年とか10
0万年とかではなく、数万年に短縮することはできる。それによって、人や他の生物の被害
を最小限にとどめなくてはならない。
とはいえ最悪の温暖化でも、全面的な氷河の発達よりは生物の被害が小さい。「地球規
模で見れば、氷河期を地球温暖化と比べるのは、水爆戦争をバーでの口論と比べるような
ものである。」(44頁) 寒冷化は人為と無関係に、楕円軌道を描いて公転する地球の運動
から起きる。回転の際の横揺れ、かしぎ、偏心振動の周期が複雑に絡み合って、地球に氷
河期と間氷期が訪れる。
5万年後には氷河期が来ると計算されていた。しかし今進みつつある温暖化が、地球の
運動による寒冷化の効果を上回るため、この氷河期はなくなった。地球が蓄えた化石燃料
を急速に消費し尽くす最悪の温暖化だと、次の13万年後の氷河期、さらには50万年後の
氷河期もなくなるかもしれない。しかし100万年後には確実に氷河期が来る。
氷河期が始まるとき化石資源が残っていれば、計画的にそれを燃やして、再び氷河期を
回避できる。今性急に消費し尽くせば、将来の人類からその手段を奪うことになる。好むと
好まざるとにかかわらず、人間活動が地球環境を左右する時代が始まっている。それがア
ンソロポシーン(人類世)だ。われわれは長い将来を見据えて、現在の行動を冷静に決めな
くてはならない。(明日に続く)