白金不動の滝


イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

  美瑛と白金を結ぶ道道の途中で、 森を2、3分歩いただけで行けます。それでも、

のある場所は山奥のような雰囲気です。車道自体が林のなかですから。水量豊

で、低温。暑い日でも、すぐに汗が引っ込みます。石仏群がありりました。霊場

うです。滝の名そのものが、信仰とのつながりを示しています。


                              小説 縄文の残光 110
 
                        あとがき(続き)
 
   シーブライトは、大きな戦争や内乱が頻発した二十世紀の、暴力による死者を

人口の4~5パーセントと推定している。それでも、標準的な狩猟採集民の暴力

死の三分の一だ、と言う。

 
   第一の論拠ついては、同じくらいヒトに近縁なボノボが反証になる。ボノボは異

性間だけでなく同性間でも、そしてむずかる幼な仔に対しても、性的接触によっ

て緊張を緩和する。その結果、チンパンジーに比べ、はるかに平和的で穏やかな

社会を営んでいる。

   第二の論拠については、次のような点を、考慮すべきだ。文明と接触した未開

部族は、伝統的なくらしが乱れ、著しく暴力的になることがある。日本列島東北地

方における、平安初期の防御性集落の出現や、前九年の役に至る争乱。そして、

北米大陸における、開拓時代の先住部族間の戦争などである。

   次に、ニューギニアのように、閉鎖された狭い地域で、地理的障害に妨げられ、

それぞれの部族が孤立している場合。境界域での偶発的な遭遇が暴力を生み、

復讐戦争の悪循環に陥る可能性がある。南太平洋諸島では、食料や耕地を求

めて他の島から来た他部族と、戦争になることがあったようだ。どちらも、閉鎖環

境下の事態である。

   それ以外でも、環境悪化などで移動してきた集団と在来集団の間で、縄張りを

めぐる戦争が起きることもあっただろう。だがこれは、移動可能な地続きの土地

が広く、人口が希薄な地域では、常態とは考えられない。

   第三の考古学的論拠が、最も異論を挟みにくい。ビンカーが指摘するように、

今も昔も、一定の割合で異常な攻撃性を持って生まれる個体があること、後天

精神障害で、性格が攻撃的に変わる場合があることは、否定できないだろう。

   特別に攻撃的ではなくても、食が欠乏した未開集団が、他集団を襲うことはあ

ったかもしれない。しかし集団内で、食料をめぐる暴力沙汰が頻発するという報

告は、見たことがない。逆なケースは多くの記録がある。欠乏すれば共に飢え、

少ない獲物でも全員で分ける。誰かが飢え、誰かが飽食する事態を回避する共

同規制は、狩猟採集集団に一般的らしい。

   また、何らかの事情で女性が極端に減少した集団が、他集団を襲い、拉致や

レイプを行うケースも考えられる。集団内部では、異性をめぐる競合や嫉妬は、

今も昔もあるはず。だが未開集団では、それが暴力に至るのを防ぎ、性的満足

から排除される者が出ないようにする、集団的知恵が積み重ねられているようだ。

参照資料で挙げた菅原和孝の三冊は、性的葛藤の解決が、集団内の結合を強

化する過程を、説得力豊かに説明している。性の点では、ヒトの狩猟採集集団

は、チンパンジーよりボノボに近い気がする。

   食と性が満たされている集団同士は、地理的に可能なら、交易と婚姻を通じ

て、近隣集団と友好関係のネットワークを築くことができる。

   総体としてのヒトの本性は、攻撃的方向にも、親和的な方向にも、向かうことが

できるのだと思う。チンパンジー的社会と、ボノボ的社会の、どちらに近づくことも

可能なのがヒトだ、と。

   未開集団と文明国家は、暴力を誘発する要因が違う。未開社会では、食の欠

乏と復讐が、部族間戦争主な原因。大義を掲げた戦争はない。常態では、性的

満足は行き渡っている。

   高度に発達した文明社会では、食は足りている。経済的・地位的格差と、序列

競争に伴って潜在する性的不満が、大義の隠れた燃料になる。現在最も有力な

大義は、より多く儲け・儲けさせること、のようだ。  (あとがき続く)