ハマナスの原野


   サイタマンさん、問題意識はあるのですが、理解が表面的で一向に深まりません。

まあそれでも、考える力がある間は、考えるのをやめられないと思いますが。コメン

ト、励みになります。ありがとうございます。

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   ハマナスは北海道海岸草原の夏を象徴する花ですが、これだけ広い原野に一

面に咲いている光景には、なかなか出会えません。映っているのは、野付半島ネイ

チャーセンターからトドワラまで続く、湾沿いの原野です。

   片道30分ほどの遊歩道が通っているけれど、中を歩いていては、この広がりが

わからないかも。写真は、少し高い位置にある車道の端から撮りました。毎年何度

も行っています。でも、毎回早すぎたり遅すぎたりで、まさにどんぴしゃりのハマナス

最盛期を目にしたのは、今度が初めてです。


                            小説 縄文の残光 105
 
                      アテルイの夢(続き)
 
      いつからか分からないが、オレの心に一つの夢が棲みついた。夢というの

   は、言葉にすると、実感からどんどん離れる。それでも無理に話してみよう。

      部族のくらしにある、開けっぴろげで伸びやかな心を保ったまま、人が大きく

   結びつく、ということかな。人や物の行き来がうんと盛んになり、大勢の力を必

   要とする物が作られ、知識や技術がどんどん新しくなる。それでも、人の心を狭

   く縛り、おおらかさを奪うような、大義の言葉は力を持たない。競争はあるが、

   動機は、新しいことを知りたい、新しいものを作りたいという欲望と達成感。

   地位・財・名声なんかじゃない。そんな世界の夢だ。

      大義に拠らずに、見も知らぬ人と人が結びつくには、どんな方法があるか、

   オレにもさっぱりわからない。実現しないことかもしれない。寝ているときに見

   る夢も、鳥のように空を飛ぶみたいな、実際にはできないものが多いよな。

      寝ている間に見た夢はだんだん忘れるが、オレの心に棲みついた夢は、日

   に日に深く心に食い込んでくる。大義の言葉は、選んだり乗り換えたりできる。

   だけどこの夢は、オレを掴まえて離さない。それは、生まれたときから心の奥

   底にあった何かと、つながっている気がする。

      夢は大義と違って、権力や暴力で他人に押し付けられない。それでも、言葉

   以前の、誰もが心の奥に持っている何かにつながっているとすれば、うつる(

   染する)ことはあるかもしれない。大義のような短期間では無理でも、二千年も

   三千年も先には、同じような夢に掴まる者が増え、世の中が変わることがある

   かもしれない。これもオレの夢だ。

      エミシのくらしを護るために闘う、今思えばこれも大義だったのだなー。だか

   ら力ずくでも、他のエミシにこの考えを押し付けようと言う者も現れた。オレは

   心に棲みついた夢があったから、賛成できなかったが。

      田村麻呂が森を焼いたとき、大義にこだわる怖さを思い知った。森は命の

   源だ。魚や鳥や獣を養い、水を蓄え、田畑の肥やしになって、人を生かす。そ

   の森を台無しにすることさえ、大義は人にさせる。戦い続ければ、さらに森が

   失われる。北の大地が、人も獣も住めないところになるかもしれない。それを思

   うと慄然とした。戦う気力が萎えた。大義はオレの心から去ったのだ。

        だが夢は去らない。命が尽きるその時まで、オレはきっと夢を見続ける。人

     命を継ぐ限り、誰かがオレと同じ夢を見る。そう考えたとき、おれはパイカ

     オマ ロに、話しておきたくなった。そして、アシリとアトイにも、この気持を伝

     えた いと 思った。  (この章続く)