十勝岳と溶岩台地


イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

   美瑛町は丘の風景が有名ですが、活火山十勝岳のふもと、白金(しろがね)温泉一

帯にも見どころがあります。今日の写真は美瑛駅から南東に26六キロほど、標高9

30メートルの望岳台で。

   噴煙を上げ続ける十勝岳と左右の連山が間近に見えます。頂上まで登るのは見

た目よりきつそうですが、緑が茂りはじめた火成岩と火山礫の台地で、散策路を辿

るだけでも楽しそうです。いつか実際に歩きたいな。


                           小説 縄文の残光 104
 

                      アテルイの夢(続き)

 
      相手が木や獣なら、オレたちも伐ったり射殺したりして、自分に役立てること

   をする。だけど仲間の死を利用することは、決してしない。お互いにそれを信じ

   られるから、仲間でいられる。だから淋しくはならない。

      仲間を死なせることもある。どうやっても生きられないことが確かで、苦しみ

   にのたうち回っているときだ。本人の苦痛を終わらせるためで、そいつの死を

   利用するためじゃない。

      オマロ、トクシがお前の妹を狼に食わせたのは、家族を助けるため、と考え

   たからだろう。その考えに、みんなが同意するはず、と。トクシにはきっと、「家

   族のため」が大義だった。大義は他人を利用する言い訳になる。

      シマもお前も、何か違うような気がした。それでも、その気持ちを言葉にはで

   きなかった。「トクはどうせもう死ぬ」、「それ以外みんなを助ける道はない」、と

   言われたら、言い返せないような気がしたからだ。そうじゃないか、オマロ。大

   義は言葉にできるけれど、大義からこぼれ落ちる気持ちは、言葉にしにくい。

      お前たちがトクのことで、なんか違うと感じた気持ち。それはトクシにもあった

   かもしれない。だけどトクシは、家族を守る責任があると思った。そして、郷人

   のみんなが考えるはず、の考えで行動した。凶作のとき、家族が共倒れになら

   ないため、嬰児を殺しても郷人は咎めない。自分のためではなく、「家族のた

   め」だ。トクシは無理にでも、自分にそう言い聞かせ、斧を振り上げたような気

   がする。

      大義大義に基づく序列があるから、人は大きくまとまって、少人数では望め

   ないたくさんの物が産み出される。産み出された物は、上に厚く下に行くほど薄

   く分けられる。だから、地位や財をめぐって競い合い争う。競うから技術も知識

   も進歩が速い。その一方で、人々は安らぎを失い、淋しさを募らせる。それが分

   かったとき、オレは仲間を、ヤマトに蹂躙させたくないと強く思った。それで今まで

   戦い続けた。(この章続く)