エゾタンポポ
サイタマンさん、子どものころ、山葡萄酒つくりや山芋堀りが実際に行われている
山村に住んでいたことはあります。でも、今回のは調べて書きました。
デジモナさん、ヒトの身体は植物の体を裏表ひっくり返した形をしているという意味
のことを、ある解剖学者が書いていて、それをずいぶん昔読んだ記憶があります。
内臓に、枝や根を袋に詰めたような構造があっても、不思議ではないのかも。
こちらは今タンポポの季節です。わたしが確かめ限りでは、ウチの辺りに咲いて
健在です。
された遊歩道脇では、セイヨウタンポポが優勢でした。しかし、藪の中の小道に入
ると、すべてエゾタンポポの場所もあります。最後の一枚は、ガクが反り返ってい
いています。
わたしは昼前に帰路に就いたのですが、その後で33.3度まで気温が上がったよ
うです。わたしも車のクーラーをつけて運転しました。午後の美幌は31.7度まで上
昇。ランニングと短パンに着替え、扇風機を回して寝ました。零下を記録したのは
数日前だったのに、ね。
小説 縄文の残光 55
オマロ(続き)
「奴らは蔑んでエミシと呼ぶ。だけど他に言葉がないなら、誇りをもって、オレ
たち自身、エミシを称してもいいんじゃないか。
エアチウもモレも知っているだろう。オマロやパイカラは聞いたことがないかな。
今から六十四年前に、海道エミシが大叛乱を起こし、当時の按察使を殺している。
かれた。そして、二十六年前に秋田城まで道路が延長され、桃生・雄勝に城柵が
できた。伊冶城の完成は十七年前だ。あれほどの大叛乱があったのに、その後
エミシはどんどん押し込まれてきた。
十年前の、ウクハウが中心になって起こした叛乱のときもそうだ。桃生城を襲
って破壊したまではよかったが、すぐにヤマトに反撃され、結局敗れている。エミ
シは一時の戦いには勝っても、ヤマトの侵攻を止められなかった。どうしてなん
だ！
四年前にアザマロの多賀城襲撃があって、今はエミシの意気が上がっている。
だが内心では、ヤマトの郡になったほうがいいと思っている族長もいるはずだ。恭
順すれば、一族は残るかもしれない。道嶋一族のように、物持ちになって栄える
家もあるだろう。それでもヤマトと戦おうとする者は、何を護りたいのだ。そして、
どうすれば、ヤマトの侵攻を止めさせられるのだ｣
エアチウが答える。
｢どうすればヤマトに侵攻を諦めさせられるか、それはオレにはわからない。
アテルイ、お前が考えてくれ。オレはお前の言うとおりに戦う。だが、何を護ろうと
しているかは、はっきり言えるぞ。
オマロは知っているよな。オレは以前、伊冶で捕まって、稲作りをさせられてい
た。柵戸の郷へ行くこともあったが、郷人はめったに笑わないんだ。笑声が聞こ
えると思ったら、誰かを馬鹿にして、みんなで嘲笑っている。何が楽しくて生きて
いるのか、さっぱり分らなかった。エミシの集落では、どこでも、みんなしょっちゅ
う笑っている。オマロ、下野の郷ではどうだった？五歳までいたんだから、少しは
覚えているだろう｣
｢そう言えば、ナタミに住みはじめてすぐのころ、みんながよく笑うんで、驚いた
ことがあるよ。毎日が尻砂の祭りの日みたいだった。向こうの子どもは普段、しょ
っちゅう怒鳴られていたなー。特に奴婢の子なんか、ひどいもんだった。郷長の
家で見たことがあるけど、まだ小さい子が、ろくに食わせてももらえずに、殴られ
たり蹴られたりしながら働かされていたよ。こっちの人は子どもに優しいね。大声
で叱る人はいないし、無理に働かせたりもしない。自分の子でなくても可愛がって
くれる。だから子どもも笑っていられるんだ｣
