雪残る五湖の木道

   
   デジモナさん、しんどい状態なのにコメントをいただき、ありがとうございます。

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   知床五湖の遊歩道は有料になって、その他にガイドを頼む必要があったりして、

歩くのにハードルが高くなりました。でも、駐車場からの木道が一湖のすぐそばまで

延長され、そこまでは駐車料だけで行けます。雪を踏んでの往復1.6キロの木道歩き

は、けっこういい運動です。でも、凍った水面、笹原、木々の若葉、白い連山の風景

が楽しく、いい気分でした。

   19日は、木道にも笹原の雪は、一時的なものだと思っていましたが、知床峠

凍結による閉鎖がまだ続いているようです。美幌でも、昨日朝は零度をわずかに下

回ったみたい。寒い日が続き、サンルームの苗がなかなか伸びません。おまけに今

年の北海道は、冷夏の可能性があるとか。庭の作物も不作になるかも。


                          小説 縄文の残光 50

 

                                          オマロ 

 

   アザマロの使者がナタミに来たとき、エアチウはナタミから一人も参加させなか

った。騒乱から一年半後のある日、集落の端(はずれ)でエアチウの見送りを受け

ているアテルイを掴まえ、オマロは尋ねてみた。

    「胆沢ではあのとき、多賀城襲撃に加わった者はいた?」

    「川筋の稲作集落から何人か、な。オレは止めたんだが」

    「エアチウも行くなって言ってたよ。ねアテルイ、どうして?ヤマトの奴らをや

っつけるんだから、行かせてもよかったじゃないか」

    「オマロ、五年前に志波の衆がヤマトと戦ったのはなぜだ?」

    「そりゃー、攻めて来たからだよ」

    「アエチウ、あなたがアザマロの誘いに乗らなかったのは、なぜですか」

    「奴は、先の戦で、志波や胆沢の者を殺し、家を焼いた。これは赦せない。もう

一つ、アザマロの使者は、参加すれば多賀城の財物や武器の分け前に与かれ

る、と言って誘った。オレはナタミの若者を、財を奪うための戦いに、加わらせたく

なかった。

   志波に攻めて来た軍勢と戦ったのは、ヤマトに組み込まれるのが嫌だったから

だ。恭順すれば、城柵の築造が始まって、オレたちもこき使われる。食い物は支

給されるが、狩にも筍採りにも行けはしない。南から百姓がわんさか移って来る。

狩場や牧を潰して田を開く。オレたちも俘軍に入れられ、何の恨みもない他所の

衆と、殺し合いをさせられるようになる。

   族長連中は饗給とかに呼び出され、食い物や酒をあてがわれる。絹や剣なん

かもらう代わりに、集落の衆に獣皮や鷲羽を集めさせなければならん。族長らが

もらうヤマトの品々を、羨む者も出てこよう。今までの部族のまとまりが崩れる。そ

んなのはごめんだ。だから戦って追い返した。

   アザマロに加担しても、財をめぐる争いが部族の中に持ち込まれるような気がし

 た。だから、若者たちに行くなと言った」

  「オマロよ、オレもエアチウと同じ考えだ。狩や採集をやめれば、稲が不作の年

は飢えることになる。ヤマトの施しで凌げば、役人にへいこらしなきゃならん。何よ

り集落に物持ちと貧しい者の別ができて、部族がばらばらになる。オマロ、お母に

聞いてみろ。下野のくらしとここのくらしで、気持が安らかなのはどっちだ、と。

   アザマロの叛乱は、いったい何のためだったのだ。ヤマト人の嘲りへの復讐か。

そんなことは、初めからわかっていなければならなかった。我慢できないくらいな

ら、柵の造営に逆らえばよかった。敵わないなら、お前の一家のように、もっと北

へ移ることもできた。

   俘軍はなぜアザマロに従った?略奪が目当てか。それなら、富者に成り上がる

競争をしている、物欲しげなヤマト人と同じじゃないか。長く俘囚でいると、ヤマトと

もエミシともつかぬ、半端な者になるようだな」  (この章続く)