知床は季節がオーバーラップ


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   美幌は桜が終わり、いま若葉が萌える季節です。昨日へ行った知床では、五湖

への道に雪と桜と若葉が揃っていました。大連休前に開いていた道を、知床峠

で行くつもりだったのに、「凍結のため通行止め」の標識が。五湖でこんなに雪が

あるのでは、羅臼岳山頂に近い峠が凍結していても、不思議はありません。ほと

んどの車がもう夏タイヤだから、再閉鎖も仕方ないですね。海が荒れていて、観光

遊覧船も出港停止でした。でも、三つの季節がオーバーラップする風景で、片道二

時間の運が十分報われました。


                          小説 縄文の残光 45
     
                 アザマロ(続き)
 
   宴席に残っていた国府役人も寝所に入った。間もなく、遠い外郭のあたりから、

叫び声が響いてきた。喧騒の気配が高まり、煙も漂ってくる。何事かと慌て騒ぐ

宿直(とのい)の衛兵の間から、広純と真綱の姿が見えている。その前に、髪を掴

んで大楯の首をぶら下げたアザマロが立つ。周りを数十人の俘囚が固めている。

    「道を開けろ。大楯のように首になりたいか。剣を捨てれば殺さぬ。さっさとど

こへなり失せろ」

    「よし、奴らは追わなくていい。外の者が捕らえる。真綱を押さえるんだ、傷つ

けてはならんぞ。広純、お前はここで死んでもらう」

   正殿が燃え、他の建物にも火の粉が飛んでいる。宿舎から飛び出した衛兵に、

次々縄がかけられた。外郭警備の鎮兵は、散り散りに走る。囲まれて降伏する

者、手傷を負って地面に倒れる者。

    「広純の首を塩桶に入れるのだ。それが済んだら、燃えてしまう前に、お前た

ちも欲しい物を奪え。だが一時(いっとき=2時間)を過ぎたら、南門の前に全員を

集めろ」

   側近の兵たちにそう命じると、アザマロは大楯の首を燃盛る炎のなかに投げ

込んだ。一時(いっとき)が過ぎ、南門前に俘兵が集まった。アザマロは五人を選

び、馬を与えて命じた。

    「お前たちは介殿(真綱)を多賀城へお送りしろ。駆け続ければ、朝には着け

る。城の外で、卿が安全に城門に入るのを見届けるのだ。

   真綱殿、この者たちを城兵に捕らえさせはせぬであろうな。オレは大軍を催し、

多賀城へ攻め上る。守備の兵は僅かしか残っていないだろう。戦おうなどと思わ

ぬがいい。そんなことをしたら、今度は容赦せん」

   真綱を囲んで五騎が駆け去る。城郭の赤い炎に顔を浮かび上がらせ、アザマ

ロは俘兵に語りかけた。

   「みんな、よくやってくれた。これより近隣近在の集落、それぞれの城柵の俘兵

に使いを送る。同心する者が集まるのを一日待って、明後日明け方ここを出発す

る。そのときまたここに来てくれ。ともに覚?城と玉造柵の敵兵を蹴散らし、多賀

城を襲おう。国府には伊冶城と比べ物にならないほど、すばらしい品々が溢れて

いるぞ」

   歓呼の声が暗い森にこだました。

 
 三日後の出発のとき、焼け落ちた伊冶城に集まった人数は、二千人を超えてい

た。接収した城内や国府一行の馬も合わせ、騎馬が五百。武器庫から奪った剣

や甲冑もある。叛徒は意気高く覚?城へ進軍した。  (この章続く)