桜三昧


   タムラ、北海道には、ずいぶんたくさん水芭蕉の群生地があるみたい。網走湖

では、呼人半島や国道沿いの、広範囲に広がっています。

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   北海道東部は、いま桜の季節です。と言っても、場所ごとに、種類ごとに少しず

つ時期がずれています。美幌や北見のエゾヤマザクラ(オオヤマザクラ)はもう葉

桜。走は見ごろかな。太平洋側はたぶんこれから。

   上の写真は7日の北見フラワーパラダイスで。多いのはエゾヤマザクラです。白

っぽいのは、ここの人が中国(から来た)桜だと言っていた種です。例年は、ほか

の桜がすて散ってから咲いていました。今年は重なっています。

   大雪山黒岳五合目にはチシマザクラがあります。6月末に、満開になっいてるの

を見たことがあります。今年はどうでしょうか。


                                小説 縄文の残光 36
  
                                それぞれの路(続き)
 
   エアチウが牧から仔馬を二頭、広場に連れて来た。子どもたちが七、八人集ま

り、騎射のまね事をして遊びはじめる。乗るのは順番だ。的は広場の西端にある

木に巻きつけられた藁。待っている者のなかに、女の子も二人いる。集落では誰

も、「女の子なんだから、」などとは言わない。それでも、こういう遊びでは、自然

に男の子が中心になる。周りでは、小さい子、女の子、年寄りが見物しており、失

敗すると囃し立てる。

   オマロが射終わって出発点に戻ったときだ。薄赤い夕陽を浴びた東の林から、

大きな馬に跨った二人の男が姿を現した。それに気付いたオマロは、すばやく馬

と弓矢を次の子に渡し、二人のところへ駆け寄る。

   「オマロ、元気だったか」

   声を掛けたのはアテルイである。傍らにはシスカイレがいる。

   「うん、今騎射の練習をしてたんだよ」

   「そうか、上達したら、胆沢の森へ鹿狩りに連れて行ってやるぞ」

   「うわぁー、嬉しい。約束だよ」

   「おう、オレは必ず約束を守る。そうだ、明日帰るとき、一緒に来るか。家には

お前より少し小さい妹がいる。遊んでやってくれ。何日かしたら、シスカイレに送っ

てもらえばいい。
 
   な、シスカイレ、それでお前は、すぐにまたここへ来る口実ができる」

   二人はエアチウに導かれ、家の前で馬を木に繋いだ。アテルイはそのまま入

り、シスカイレはオマロの家に向かって走った。目当てはシマである。

   四月にシスカイレが、ナタミの使者をアテルイのところへ案内した。話を聞いて、

アテルイは、胆沢の族長連中がヤマトの志波攻めに加担しないように、陰で工作

をした。五月には、アテルイの周りに集まる若者の何人かが、密かに志波の男に

混じって戦った。攻撃側の俘軍のなかに、その一人を見知っている者がいて、十

一月に胆沢村の一部が報復される遠因になった。

   この年から、アテルイの姿がナタミ集落にしばしば見られるようになった。エア

チウがアテルイを訪うこともある。

   アテルイは、ヤマト言葉を学んだことがあると、エアチウに話した。伊冶城や多

賀城で、柵戸や商人などから、さまざまなことを聞き出していた。わかってきた都

人のものの考え方から推測し、エミシ地域でヤマトが次にどう行動するか、うまく

言い当てられることがあった。

   恭順したエミシがどうなるかも知っていた。有力な族長は、官位を授けられる。

酒食でもてなされ、剣・馬具・布などを給される。だが、村の人々は労役や軍役を

課される。狩りをやめ、森や野を開拓し、稲作民化するよう求められる。開拓後、

いい田畑は、ヤマト地域から移って来た富戸の手に落ちる。抗えば捕まり、とき

には遠い西の国まで移配される。移配エミシも俘囚も、各地の戦で、最も危険な

場所に配置される。

   アテルイは、求められれば、自分が知ったことを、情熱を込めて、だが静かに

話す。包容力のある人柄もあって、徐々にその名を、胆沢以外の血の気の多い

若者たちにも、知られるようになっていた。海道や雄勝の若者、ときには城のあ

る栗原からさえ、訪れる者もいて、各地の情勢にもさらに詳しくなる。

   行き来するうちにエアチウは、そんなアテルイの立場を、よく知るようになって

いた。  (この章続く)