おしゃれなウミアイサ


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   カワアイサは何度か撮りましたが、ウミアイサは初めてです。ちょうど1週間前の網

走湖で。名前の通り、海や河口で越冬するのだそうです。日本国内で繁殖する留鳥

はいないようです。渡りの準備のため、網走湖に遡上したのかな。大勢力のキンク

ロハジロから少し離れ、潜水を繰り返していました。
 
  初めの二枚がメスで、後の二枚はオス。両方とも寝起きの頭みたいに、冠羽が伸

びています。茶色や灰色が混じるメスに比べ、オスは白黒二色で、すっきりしていま

す。首の白がオシャレです。


                              小説 縄文の残光 22
 
                        シ マ(続き)
 
   郷長はこの甥に甘いところがあって、最後には折れた。どうせ噂になっている。

もうシマを出世の道具に使えないのだ。二人は結婚し、母の家近くに小屋を建て

てもらった。ヨシマロが生まれ、四年後にセコナが生まれた。その年、夫は庸調を

運ぶ郷人の頭として都に行き、そのまま帰らなかった。同行した郷人が言う。

   「ヤツは運脚を差配した郡家の者とつるんで遊び、夜も宿に戻らなかったぞ」

   「遊び女()といい仲になって、姿をくらましたんじゃないか」

   「差配は何も言わず、我らをそのまま出発させたんだ」

   夫は結婚当初こそ、欲しがっていた玩具を手に入れた子どものように、うるさ

いほどシマ付きまとったが、だんだん抱く回数が減り、田仕事も嫌がるようになっ

ていた。この男は勉学に嫌気がさす一方で、都ぶりにあこがれるところもあった。

鄙の百姓を蔑む人々の中で育っている。奴らは小汚い竪穴住居の土間でくらし、

文字を知らず、礼儀もわきまえない、と言っていた。今思えば、シマのことも、

貌の美しさに慣れ、しょせん泥臭い田舎娘と、蔑むようになっていたのだろう。

出世の道をはずれた挫折感に苛立ち、自分が惨めなのは、この女のせいだと、

自責の念を憎しみに変えたにちがいない。

   シマは当時、夫のそんな気持ちはわからなかった。だが自分を見る目の冷た

さには気づいていた。もともとトクシの身を案じ、いやいや結婚した相手である。

母とはちがって、この男に縛られる理由はない。戻らないとわかっても、悲しみは

湧いてこない。なぜ探して連れ帰ってくれなかったのかと、郷人たちを責める気に

はならなかった。
   
   夫が失踪して三年過ぎれば、妻は再婚できる。フケイの計らいで、トクシがシマ

の小屋にまた通いはじめた。甥の不始末があるので、今度は郷長も反対できな

い。二人の結婚は正式なものになった。シマは二十歳。その四年後にオマロ、六

年後にトクが生まれている。ヨシマロもセコナも、郷長より義父になついたので、ト

クシはこの二人も連れて郷を離れたのだった。


   シマとその家族が、ナタミ川沿いの集落に住み着いて一年になる。オマロは六

歳。尻砂にいたらもう、田植えの時季には苗を運ばされ、秋には稲刈りを手伝わ

される年頃だ。だがここの子どもは、男の子なら、山で大人に遅れずに歩ける体

力がつくまでは、群れて遊ぶのが仕事だった。

   オマロはエアチウに小さな弓を作ってもらい、みんなといっしょに、近くの森で

狐を追いかけたり、山鳥を狙ったりしている。トクシの恬(やす)を持ち出し、浅瀬

で鱒を突く。大人は何も教えない。せがまれればやって見せるだけだ。子どもは

遊びながら、体力をつけ、くらしの術を身につける。

    よちよち歩きの子どもが刃物を振り回しても、焚き火に近づいても、誰も止めた

り叱ったりはしない。身をもって危険を避ける術を学ぶ機会を奪うのは、よくないと

考えられている。怪我も火傷も珍しくはない。手当が及ばず、死ぬことさえある。それ

でも、自分の身を自分で養い、安全を守る力と知恵が育たなければ、どうせ長くは生

きられないのだと、親はあきらめる。こうして育つから、大人は生き抜く自分の力に

自信をもっていて、誰もが誇り高い。(この章続く)