雪の林にキタキツネ
せせらぎ公園でも姿を見なかったので、今年になって初めての出会いです。肉食動
物ですよね。冬眠しないのだから、雪の季節でも食べなければ。エサはウサギやネ
ズミなどでしょうか。
小説 縄文の残光 11
逃 散(続き)
数が足りないので、主人から逃れた奴婢や、逃散してきた百姓を受け入れる郡
があるという。それに、税の負担が少ないとも、囁かれていた。
トクシもかつて力役に取られ、伊冶(これはり)城の造作現場で働いたことがあ
る。そのとき知った柵戸のくらしは、噂と違い厳しかった。庸調は下野に劣らず重
く、エミシに饗給する物資の負担があり、頻繁に軍役・城柵造作・金採掘に徴発
される。
ミシ村の様子も聞いた。その俘囚の言うとおりなら、賦も力役もない。男は好きな
ときに狩りや漁に出かける。女や年寄りは稲や粟を育て、山菜やキノコ・木の実
を集める。さまざまな食べ物があるので、稲が不作でも飢えることはない。戦さえ
なければ、のどかな日々のようだった。だからトクシは、柵戸になるつもりはなか
った。荒エミシの村に住もうと、心に決めて郷を出た。家族とともに、潅がい稲作
ていたのである。(この章続く)