夢幻
デジモナさん、花々のお写真を見ると、懐かしいような気がします。花屋に入ればありますが、野外で見られ
るのはまだまだ先です。
こんな木々をじっと見つめながら、独り土手上を歩いていると、だんだん現実感覚が希薄になることがありま
す。映し出される幻想世界に引き込まれたような、目覚めたまま夢を見ているような、ふわふわした気分
です。
前の日は湿度が高く、その朝はうんと冷え込み、歩きだしてしばらく顔の露出した部分が痛い。厚ぼっ
たい雪がかぶさる針葉樹ではなく、霧氷に包まれた細枝が一本一本見分けられる落葉樹。うす雲が陽を
隠したり、陽が高くなったりして、日の出直後のピンク色が消えている。そんな条件がすべて揃ったとき
です。
雪道を歩いているうちに、指先に感覚が戻り、背中が少し汗ばんできます。風景は極寒を感じさせるの
に、体はぽかぽか温かい。視覚と体感のアンバランス。それに銀色の細密画の繰り返し。それで軽い催
眠状態になるのかな。
このまま目をつぶったら、夢幻のなかに意識が融けて、何の苦痛もなく逝けるかなと、ふと思う。甘美
だけれど、ほんのちょつと危うさもあるような感覚体験です。