トドワラ蕭条(しょうじょう)
デジモナさん、赤みがさしはじめた早朝の湾の風景、きれいですね。スミレの話ですが、花が2センチほどのタ
チツボスミレの仲間だと思います。北海道によくあるタチツボスミレは4種。そのどれでしょうか。
累々と横たわるトド松の残骸。立っているトド松もぜんぶ枯木です。すべて朽ち果て、泥だけが広がる場所もあ
ります。この一帯が野付半島観光の目玉、トドワラです。この日この時間はまだ曇っていて、ほとんど緑も萌え
ていません。それだけ蕭条とした雰囲気が強くなります。
かつて、巨木が高さを競い、熊笹などの下草が繁る、鬱蒼とした森の時代があったはずです。今より気温が低
く、海が後退していたのでしょう。野付半島のいまは、漁業関係の建物が少しあるだけで、観光客以外は人気の
少ない寂れた土地ですが、江戸時代には交易地として賑わっていたのだとか。このあたりを歩くと、自然と人の
有為転変が偲ばれます。
現在トドワラからすこし野付半島の根元方向に行ったところで、ナラ林の立ち枯れが進行中です。ナラワラと
呼ばれています。何年かしたらそこも、写真のような風景に変わるのでしょうか。その前に温暖化が進んで、半
島そのものが海底になっているかな。森が育つまでにも、枯れて朽ち果てるまでにも、何百年もかかるのでしょう
ね。そして、陸になったり海になったりする変動は、短くても数千年単位のイベント。どちらも人の短い生涯とはち
がうスケールです。