春兆す湖
関東以南には春たけなわのところも少なくないのでしょうね。ここ、先週の屈斜路湖は、ようやく春の兆しが見え
てきたところでした。
昨日から読みはじめたスティ-ヴン・J・グールドの遺作、『ぼくは上陸している』(早川書房)に夢中になっていま
す。彼が亡くなってから10年、日本でこの最後のエッセイが出版されたのが去年10月でした。翻訳に時間がか
識の広がりは尋常ではないので、きちんと調べて翻訳するにはこれだけの年月が必要だったのだと思います。
ました。
分厚い上下二巻で、欧米では知られているのかもしれないけれど、わたしにとっては初めての人名でだけでも
膨大な数が出てきて、けして読みやすい本ではありません。それでも夜を徹して、この時間までに上巻の3分の
2ほど読んでしまいました。地球生命35億年の歴史を踏まえ、有名無名の人々が送った人生のトレビアルなで
きごとに光を当てています。悠久ともいえる時間を参照した、ヒトの本性に対する深い洞察によって、いろんな人
のエピソードが暖かく照らし出されています。読んでいると、華々しいことのなかった自分の生涯も、何か貴重な
もののように思えてきます。いつか避けがたく訪れる死への忌避感が薄らぐようなところがあって、日々老いに追
い立てられる歳にさしかかったわたしの気持ちにフィットするのかな。