ネオリベラリズムの黄昏
昨日は1日中アメリカ大統領選開票の実況中継を見ていました。イギリスのEU
離脱を問う国民投票の結果も世界の人々を驚かせましたが、こんどのトランプ当
選はさらに大きな波紋を広げています。いろいろと感想はあるのですが、一つだ
け、ちよっと書いてみたくなりました。
支配の終わりが始まったと、わたしは感じたのです。ネオリベラリズムの核心は、
[金銭と支配・服従の階梯における地位への人々の欲望を制約しない最低限の
ルールの下で、人々を競い合わせる制度・政策を最上とする信念]であると、わた
しは考えています。この信念に基づく国際関係、国内政策が、中国やロシアを含
めて世界に行き渡り、その結果、富める国と貧しい国の格差、富める少数と貧し
い多数の格差が、かつてなかったほど拡大しました。国際格差はアフリカ・中東発
の戦乱とテロリズムの最大の原因です。
グローバル化した資本は、国際的な生活水準・賃金の格差から大きな利潤を汲
み上げてきましたが、生活水準の向上する国が増え、この方向にも陰りが見えて
きました。彼らは、これまで低開発国から受け取っていた過剰利潤の一部を分配
してきた自国労働者にも、低賃金と過重労働を期待するようになります。失業の
恐怖があれば、労働者は劣悪な労働条件を受け入れるしかありません。転職の
条件を準備することなくスクラップ&ビルドを推進すれば、自然に失業者が増えま
す。自分や自分の親しい人たちが、ほこりを持てない劣悪な労働環境を避けようと
すれば失業しかかないと思えば、自国に戻ればもっとひどい生活が待っていて、
低賃金・過剰労働でも受け入れる移民にも敵意が向きます。
望感を甘く見ていたのです。もちろん、絶望した若者たちの多く、はっきりネオリベ
ラリズムを敵視していたわけではありません。ただ、体制側の人間を信じられなくな
っていたのです。アメリカ大統領選がサンダースとトランプの間で争われたら、絶望
した若者たちにとって、少しは良かったのだと思います。ちなみに、イギリスとアメリ
カは、ネオリベラリズムを世界に先駆けて政策として実行した国です。
これまでの制度・政策に沿ってのし上がり、巨大な富と力を蓄えてきた勢力は、
現状改革に徹底的に抵抗するでしょう。トランプがネオリベラリズムに立ち向かうこ
とは考えられません。彼を支持した人々は再び絶望することでしょう。その結果、
アメリカにどんな混乱が広がるかは予測できませんが、世界基準になってきたネオ
リベラリズムに亀裂が入ったことは確かだと思います。