光る流氷の海


   エイゲカイさん、ご訪問ありがとうございます。御衣黄のお写真、さすがにきっちり

した構図ですね。行き当たりばったりで、ヒントもぼけがちなわたしなどとは大違い。


   デジモナさん、薄緑と紫が引き立てあっていますね。車で一時間ほどのところに

藤園がありますが、ここ何年か素通りです。お写真を見て、今年は行く気になりまし

た。花期は六月だったかな。

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   日の出直後、銀色に光る流氷の海です。今年は四月になっても、こんな風景が見

られます。海氷速報によると、昨日夕方もサロマ湖から能取岬にかけて、上の写真

程度の氷量だったようです。


      小説  縄文の残光  7
           
                                      ウクハウ(続き)

    旅の途中で傷が悪化し、ウクハウは両脇を抱えられてゆっくり進んだ。一行が

気仙の海岸に出たとき、入り江に十艘の小船が入っていた。荷を積み込んでい

る舟人に尋ねると、多賀城へ交易に行き、都母(つも=青森県七戸地方)へ帰るの

だと言う。ウクハウの母が、背中の荷を下し、舟人に語りかける。

    「わたしたちには、閇伊(へい= 宮古市 や閇伊川中流)に嫁いだ娘がいま
  
す。生まれた子に会わせたいと招かれ、旅をしています。山中で先行した息子

が、何しろあの図体ですから、狩人に熊と間違われ、矢傷を負ってしまいまし

た。自分で歩けず、難渋しています。船に乗せてもらえないでしょうか」

   そう言いながら、荷を探って玉と美しい櫛を取り出した。ウクハウが桃生城で

に入れ、母に贈った品である。

    「お礼にこれを差し上げます。きっと女の人たちが大喜びしますよ」

   多賀城に行っていたから、船人は遠田の戦いのことを聞いている。一行の

性はだいたい見当がつく。だが国府で、不愉快な目に遭って来たところだった。

取引することになった相手は、都から下向してきた官の家人。権柄づくで、不当

な交換を押し付けた。だから役人に対して不快感がある。当時閇伊や都母に、

ヤマトの勢力は及んでいない。ここまで来れば役人をはばかる必要はなく、遠田

エミシを嫌う理由もなかった。一行は、贈り物の効き目もあって、宮古まで船に乗

せてもらうことができた。

   嫁いだ娘の話は嘘だった。交易のある遠方集落との婚姻は、ときどき行われ

ている。不自然ではないと、母が考えたことである。とはいえ、顔の広いアシレラ

は、実際閇伊に知り人がいた。土地は広く人は少ない。保証する者がいたので、

山間(やまあい)に住み付くことが許された。季節は秋。雪の前に、森の恵みを蓄

える時間はある。耕地や牧を開く農具や、収穫までの食物は、携えて来た財と交

換で得られる。やがてこの地に、ウカンメ部族が再建されることになる。だがウク

ハウは、いつまでも傷が癒えず、次第に体が弱り、翌年秋を待たずに世を去っ

た。享年四十二歳。ヤマトなら兵役を免除される年齢までは、まだ十八年残って

いた。 (この章終わり)